社会人から臨床心理士(公認心理師)になる強み・弱み

社会人から心理職
スポンサーリンク

社会人から心理職(臨床心理士/公認心理師)を目指す人は、実は少なくありません。

でも実際にその道に進もうとする時には誰しも迷うものです。

「本当に今から臨床心理士/公認心理師になれるんだろうか?」
「ストレートで進学してきた若い子の中でやっていけるだろうか」
「社会人経験って心理の仕事に活かせるのかな?」

そんなふうに、色々な疑問や不安が湧いてくることでしょう。

今の仕事を辞めて新しく心理士の道を目指すとなれば、人生の大きな転換点になります。
迷うのは当然のことですよね。

でも、そんな疑問を実際誰かに訊ける機会ってなかなかないと思います。

そこで、実際に社会人から大学院に進学し、臨床心理士/公認心理師になった倍田が、
自分の経験や、友人知人の声をもとに、
社会人経験者が臨床心理士/公認心理師になる強み・弱みをご紹介します。

これを読んで、ご自身が心理の世界に進むのかどうかの判断材料にしていただけたらと思います。

社会人から臨床心理士/公認心理師になるとはどういうことか

まず、社会人から臨床心理士や公認心理師を目指すとはどういうことを意味するのでしょうか
強み・弱みを考える上で大事なことなので、そのプロセスを整理しておきましょう。

これまでのキャリアを捨てる

社会人経験があるということは、これまでに何らかの仕事をしてきたということ。
したがって、これから心理職を目指すということは、
これまで積み重ねてきたキャリアを一旦手放すということに他なりません。

これまでのキャリアを捨ててもいいのかどうか、
心理の仕事に、過去のキャリアや職務経験を活かせるかどうか、

この辺りがポイントになってくると思います。

(なかには、これまでの仕事のキャリアアップとして資格を取得する人もいます。ただ、そういう方は特に強み・弱みで迷うことはないと思うので、ここでは考慮から外させてください。)

大学院に入り直す

社会人から臨床心理士/公認心理師を目指す場合、
基本的にはまず大学院に進学することが条件となります。

そこにはいくつかの要素が絡んできますが、以下のようなことがネックになりやすいでしょう。

  • 大学院入試に合格しなければならない
  • 在学中(2年)のお金や時間を準備しなければならない
  • 修士論文を提出しなければならない(専門職大学院を除く)

これらの問題をクリアできるかどうかが大事になってきます。

未経験の分野でキャリアをスタートさせる

これまでのキャリアを捨てるということと対になっていますが、
臨床心理士/公認心理師を目指すということは、多くの人にとって、
全く新しい分野でキャリアをスタートさせるということになります。

中には、これまでの仕事に付加価値を与えるもの、あるいは、
これまでのキャリアからのステップアップとして、心理職を位置づける方もいます。
(たとえば、教員の方がキャリアアップのために心理系大学院の夜間コースに来られたり、福祉の仕事をされていた方が同じ領域で転職する先として心理職を選んだりすることがあります。)

ですが多くの方は、社会人生活の途中から、全く別の分野に方向転換することになります
それがあなたにとってどんな意味を持つか、ということが問題になるでしょう。

社会人から臨床心理士/公認心理師になる強み

それではまず社会人から心理職を目指す強みの方から見ていきましょう。

強み①:これまでに培った社会的スキルを活かせる

これは大きいと思います。

会社で当たり前のようにやっていた、
色々なステークホルダー(同僚・上司・他部署・お客さんなど)との関係を構築する力、
それを維持しながら仕事を進めていく力

それらは必ず、心理職でも生かせるスキルです。

どこの現場でも、心理は人員の数が限られていることがほとんどです。
心理士しかいない職場、というのはほとんどありません。

なので、直接の上長や同僚はもちろん、他部署や他職種、
患者さんやご家族、その関係機関、地域の施設や住民など、
様々な人とコミュニケーションを取らなければいけない場面が出てきます。

ストレートで大学院に来た子たちは、いきなりそういう場面に入ってしまうと、
心理としてのスキル+社会人としてのコミュニケーション能力
この両方を同時に身につけなければならないので、結構苦労するようです(もちろん人によりますが)。

社会人経験のある方は、コミュニケーション能力やプレゼンテーション能力が高い方が多いので、
就職もスムーズに決まる方が多い
印象です。

強み②:これまでに培った事務的スキルを活かせる

意外と生かせるのが、事務系のスキル。
大学院の講義では何かと、発表したり文書を作ったりする機会があります。

  • 自分で調べたことをまとめて文書を作り、授業で発表する
  • ポスターや資料を作ってみんなの前で修論の説明をする
  • 表計算ソフトを使って簡単なデータ集計をする
  • メールで院生や教授と連絡を取る
  • スケジュールを立てて研究を進める

などなど。

これらはそのまま、社会人時代のスキルを活かせる場面です。

修論の執筆も、まさにデータ処理や文章作成の能力を使う場面ですよね。

社会人経験者からすると、これらはどれも当たり前のことだったりするのですが、
学生にとっては初めてのこと・難しいことも多いのです。

私は結構、授業で発表するたびに、
「資料が分かりやすい!」「すごい!」と言われ、面食らいました。

ある教授からは、「この資料、他で使わせてもらってもいいですか」と聞かれたこともあります。
(尊敬する先生だったので、快諾しました。)
自分にとって何でもないことが、場面によっては重宝されるスキルになるのです。

これは、それだけアドバンテージがあるということで、
研究を進める上でも、学会発表などをする際にも、必ず生かせる強みと言えます。

そしてもちろん、心理職として就職してからもこれらを生かすチャンスはあります。

  • 心理検査の所見を作成するとき
  • 他職種向けに講義やプレゼンテーションをするとき
  • チームで話し合ったりタスクを進めたりしていくとき
  • 関係機関に電話やメールで連絡を取るとき
  • データを整理して上長や外部に向けて説明をするとき

などなど。

心理は話を聴いたり考えたりすることがメインの仕事ではありますが、
書類仕事や情報のやり取りも結構多いです。

強み③:社会人のクライアントの気持ちや状況を理解しやすい

これはイメージしやすいところかもしれません。

どこで働くかにもよりますが、特に医療や産業の現場では、
社会人のクライアントと接することが多い
です。

心理士は、具体的に困っていることやストレスを感じる場面を聞いていくことになるわけですが、
その時に会社で働いた経験があると、
その辺りの話が非常に理解しやすく、また話を深掘りしていきやすいです。

たとえば、

  • 残業時間は月何時間くらいなのか
  • 業務量や難易度はその人に合っているのか
  • 上司や先輩、同僚との関係は良好か
  • その人の部署内での役割はどのようなものなのか
  • しかるべき相手にちゃんと相談できているか
  • その人自身の業務遂行能力はどうなのか
  • 経済的な状況はどうなっているか

など。

これらを実際にすべて質問するというわけではありませんが、
こういった具体的・現実的なことを念頭に置きながら、話を聞くことができるわけです。

これが、学生しか経験したことのない新人心理士とは圧倒的な違いであると思います。
会社という組織や働き方を経験したからこそ、共感できる部分があるはずです。

強み④:ストレートで進学した学生とは熱意が違う

これは実際に感じたことですが、
学部からそのまま大学院に進学してきた人に比べて、
社会人経験をしてから進学してきた人は、熱意や真剣さが強い傾向があります。

それまでの仕事を辞めて、自分の時間とお金を使って入学してくるわけですから、
学ぼうとする姿勢にも違いが出るのです。

勉強しようという思いが強いほど、本もたくさん読みますし、
授業や実習への参加も積極的になります。

私の場合で言うと、大学院から紹介された実習は期間が短かったので、
自分で別の実習先を見つけてさらに一年間の研修を積んだり、
心理のアルバイトを掛け持ちして現場での経験を増やしたりと、
大学院時代は結構アクティブに動いていました。
そういった中で「うちに就職しないか」と言ってもらったこともありましたし、
心理検査の所見を結構書いていたので、就職後の病院臨床でもすぐに経験を生かすことができました

他の学生に比べて熱意や真剣さがあるということは、
それ自体が学びや就職においてアドバンテージになるのです。

強み⑤:就職先で重宝される(就職しやすい)

社会人経験があるということは、①②で挙げたような基本的なスキルを持っていると期待されるので、
就職する際にも有利に働くことがあります

もちろん組織の風土や状況によって、新卒のフレッシュな人材を求めていることもあれば、
経験を積んだ中堅を求めていることもあるので、社会人経験が必ず有利とは言えません。

ただ、ある程度の期間、同じ企業に勤めたという実績のある人であれば、
やはりそれだけでも「社会人としてきちんとした人なんだろう」、
「基本的なコミュニケーション能力や業務遂行能力がある人だろう」

という目で見てもらえるものです。

心理職としては未経験であってもそれは一つの評価ポイントになりますし、
実際に就職した後でも、初めからある程度信頼して仕事を任せてもらえることがあります。

社会人から臨床心理士/公認心理師になる弱み

では次に、社会人から心理職を目指す弱みをお話ししましょう。

弱み①:これまでのキャリアを捨てることになる

これは人によっては、やはり悩むところかもしれません。

これまで数年(あるいは数十年?)にわたって積み上げてきたキャリアを、
一旦手放すことになる
わけです。

せっかくの積み上げをリセットするようなものなので、迷う人も多いと思います。
つまり、「失うものがある」ということ自体が弱みであるといえます。

それでも心理職に転職しようと考える時点で、何か強い考えがあってのことでしょうが、
やはり、これまでのキャリアを本当に捨ててしまっていいんだろうか?
と迷うことはあるでしょう。

特に、会社の中である程度の地位を獲得していたり、
相応のスキルを身につけたりしてきた人であれば、
なおさら躊躇するところだと思います。

私の場合は、それほど悩む期間は長くなかったのですが、
それでも、「せっかく昇格したのに、もったいないかな…」とか、
「なんだかんだで何年も経験してそれなりにスキルアップできたのに、辞めちゃっていいのかな」
という迷いはありました。

そことどう折り合いをつけられるか、というのが、
一歩踏み出すかどうかの分かれ道かもしれませんね。

でも実際には、メリットのところで挙げたように、
これまでの経験を生かせるポイントは、実は結構あると思います。
ぜひご自分でこれまでのキャリアやスキルを振り返って、
今後のキャリアに何を生かせそうか、分析してみてください。

弱み②:未経験の分野でキャリアをスタートさせることになる

先ほどの項目ともつながる部分ですが、
新しい分野でのキャリアをスタートすることになるので、
やはり多くの人が不安や迷いを感じるものだと思います。

せっかくの社会人経験も一度リセットされてまた新人から始めることになるので、
スキルの習得や文化の吸収などに、最初はかなりのエネルギーを使います
一番下っ端として働くことになるので、プライドが傷つくという方も、
もしかしたらいるかもしれません。
自分がどのくらいやれそうかは、なるべく具体的にイメージしておいた方が良いかもしれません。

ただ同時に、「この歳からでも新しいことにチャレンジできるんだ!」という
ワクワク感も湧いてくるものです。
まずは飛び込んでみないと分からない、きっと何とかなるはずだ、
そんな勢いで進んでみるのも、悪くはないと思います。

弱み③:独特の癖や習慣が身に付いてしまっている

これはなかなか自分では自覚しにくいところです。

社会人になって数年経つと、多くの人が、自分の会社や職種や業界に特有の
文化・習慣に染まっている
ものです。
その業界特有の言葉遣い、言い回し、人との関わり方、仕事の進め方、
そういうものがどんな仕事にもあると思います。

それらは日々の業務を進めていくために必要なことなのですが、
一旦外の世界に出ると、他人の目にはそれが独特に映ることがあります。

また、心理の業界もある種独特な文化を持っているので、
自分が身につけてきた価値観や習慣が、心理職のそれとはズレている、ということも起こりえます。
そのことに自分で気づければ良いのですが、
気づけなかったり人からも指摘してもらえなかったりすると、
現場での不適応につながる可能性があるので、気を付けたいものです。

たとえば私はIT業界で働いていたので、
成果物やスケジュール管理をきっちりやることが身についていて、
ついそれを他人にも期待する癖がついていました。

ですが大学院という学びの場や、心理臨床の世界では、
そういった強迫的な社会の美徳はあまり重視されません。
(それに価値がないわけではありませんが。)
なので、最初のうちは、「なんでみんなきっちりやってくれないんだろう?」という
フラストレーションを感じることもあったわけです。

そういった習慣は、後からなかなか変えにくいこともあるので、
自分で意識しておいた方が良いでしょう。

弱み④:経済的・時間的な余裕が必要

社会人から新たに心理士を目指す場合、基本的には2年間大学院に在籍し、
講義への出席のみならず、研究や実習を積み重ねていくことになります。

学部と違って、大学院の講義は少人数制ですし、発表の機会も多いので、
自分で調べ物をしたり資料を作ったりする時間も必要です。

したがってその間は基本的に、心理にどっぷりな2年間を過ごすことになります。

(夜間開講の大学院や、通信制大学院もあります。→作成中)

つまり2年間の学費に加え、生活費を賄うだけの経済的余裕
調査・研究・実習などに使うだけの時間的余裕がなければ、
大学院を修了すること自体が難しいでしょう。

学部生であれば、親元にいる、もしくは、親のお金で生活している人が多いので、
この辺りはそれほど大きな問題にはならないでしょう。
しかし一度社会人になった人間は、これらを改めて準備する必要があります。

ここは大事なところなので別記事で詳しく解説したいと思いますが、
私の場合は、奨学金の貸与を受けつつ、貯蓄やバイト代を使って2年間を過ごしました
そして、バイトをかなり頑張ったのと、奨学金の給付等も受けられたため、
結果的には貯蓄はほぼ手つかずのまま、学費+生活費をほぼ賄うことができました

この辺りの工夫や裏技は、いずれ記事にする予定ですが、
工夫次第で経済的な負担は減らせる、ということは覚えておいていただければと思います。

弱み⑤:気力・体力・記憶力が低下している

最後に、気力・体力・記憶力の問題です。

悲しいことですが、我々は、昔、自分が大学生だった頃に比べて、
気力も体力も記憶力も、あと思考力や柔軟性や発想力も、だいぶ衰えています。

このことは、分かっているようで分かっていなかったりするので、肝に銘じておいた方が良いです。

大学院に進学した自分を想像するとき、なぜか私たちは
大学生の自分がそのまま進学したような想像をしてしまいがちです。

つまり、「夜、帰ってから何時くらいまでは勉強できるだろう」とか、
「単位がこれくらいなら、実習とバイトは週何時間くらい入れられるな」とか、
「このくらいのペースで本が読めるだろう」とか、
「何年くらい経験を積めば、業務に慣れて知識もついているだろう」とか、
そういう算段を、若い頃の自分を基準にやってしまうことがあります。

でも、思っている以上に、体も脳も心も衰えています。

  • 新しいことを覚えるのには時間がかかるし、
  • 覚えたつもりのことも忘れてしまうし、
  • 思った以上に講義や実習で疲れてしまうし、
  • 人との関わりで生き生きと心が動くような感性も鈍っているし。
  • 柔軟で新しい発想はなかなか浮かんできません。

私は、大学院や現場でそのことを何度となく痛感しました。

でも、私たちは失うものばかりだったわけではありません

度胸、協調性、落ち着き、いい意味での諦め、自分という生き物に対する知識、
そういったものを、同時に身に付けてきてもいます。

若さやパワーは少なくなっているかもしれませんが、
それを補っていくだけの経験も積んできているはずです。

まとめ

以上、社会人から臨床心理士や公認心理師になることの強みと弱みを挙げてきました。
いかがだったでしょうか。

「自分の場合はどうかな」と、具体的にイメージする材料にしていただけたらと思います。

見ていただいたように、人によって、社会人経験が強みになるか弱みになるかは違うと思います。
私自身は、弱みも実感しているものの、総合的に見れば、
心理職を目指すうえで、社会人経験は十分強みになると思っています。

さらに知りたいという方は、以下の記事もぜひ参考にしてください。

社会人から心理職を目指せる?→作成中

もっと詳しく知りたい(業務内容、年収、適性、やりがいなど)→作成中

資格を取る方法を知りたい→作成中

心理士のイメージを掴みたい→本を紹介

コメント

タイトルとURLをコピーしました