これから臨床心理士/公認心理師を目指したい、と思う方の中で、
「心理職は給料が少ない」「稼げない」という話を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
心理職に興味がある・目指してみたいと思うけれど、
実際、稼げるの?
生活していけるの??
と不安に思っている方もいることでしょう。
この業界は、体質が古いからなのか、専門職だからなのか、
仕事の探し方や待遇についての情報があまり出回っていません。
特に大学院の新卒で仕事を探すときは、情報も少なく、手探り状態になりがちです。
就職先には、医療や教育など、いくつか領域がありますが、
「どの領域を目指していけばいいのかよく分からない」、
「実際にどんな勤務になるのかイメージできない」、
という方も少なくないでしょう。
そこで、病院勤務の心理士の立場から、給与をはじめとして、
業務や勤務の実際についてお伝えしていこうと思います。
まず本日は、いきなりの給与編です!!
まず心理職の業種の違いを押さえておこう
どんな職種もそうかもしれませんが、
心理職は、領域(医療・教育・福祉・産業・司法など)によって待遇がかなり違います。
同じキャリア(修士の新卒)でも、時給ベースでざっと2~3倍、変わってきます。
もちろん、常勤か非常勤か、公務員か民間か、によっても違いますし、業種内での差もあります。
ただ、経験を積んでいくと、違う領域への転職は段々しにくくなります。
なので、最初の就職先を選ぶ際には、領域による違いを理解しておいた方が良いです。
これは当たり前の話なのですが、
心理職は就職口が少ないせいか、新卒の時にはそこまで意識しない人が多いです。
(とりあえず内定をもらったところに就職してしまう&そうするしかない。)
主要な領域は、上にも挙げたように、大きく5つあります。
この中でも特に医療領域の心理職は、求人自体も少なく、
公募されないこともあるので(最近はそういうことは減ってきましたが)、
給与体系や待遇の実際が外から見えにくいです。
私は単科の精神科病院に勤務しているので、その実態を中心にお伝えしていこうと思います。
精神科病院で勤務する常勤心理士の給与とは
結論を先に言ってしまうと、
私の勤務先の、新卒採用の場合の年収は、370~420万円くらいです。
基本給+ボーナスで370万くらい、残業があればもう少し上がる、という感じです。
勤務先の場合、残業はせいぜい10~20時間程度、残業代は月に数万円です。
ちなみに私の勤務先は、数年前まで残業代がつきませんでした。
ブラックですね。。。
(交渉の結果、支給されるようになりました。)
常勤職の場合なので、ボーナス込みでこの年収ですが、月給(基本給)は20万円弱。
そこに各種手当が付きますが、それほど大きな額ではありません。
そこから税金や社会保険料が引かれるので、
手取りにすると、およそ15~17万円くらいです。
(前年の所得がなければ住民税が引かれないので、初年度は少し上振れします。)
どうでしょうか?
こんなものだろう、という感じでしょうか。
それとも、ちょっと少ないと思いましたか?
・・・。
・・・・・。
ここだけの話ですが、
私は正直、ちょっと少ないと思っています。
あ、つい声が大きくなってしまいましたね・・・。
ちなみに、精神科病院勤務の友人の心理士たちに聞いてみたことがありますが、
民間はやはりどこも新卒初任給は同じくらいのようです。
(うちの病院より1~2万円上回る病院が多かったです。。)
精神科病院勤務の心理士の給与は多いのか少ないのか
この給与は他と比べて多いのでしょうか、それとも少ないのでしょうか?
そこが気になるところですよね。
それではできるだけ、日頃の不満 私情を排して客観的に考えるために、
いくつかの観点から比較・検討してみましょう。
初任給の全国平均(学歴別)と比べてどうなのか
ではまず、日本全体の水準と比べてみましょう。
先ほども書いたように、精神科病院の初任給はおおむね20万円ほどです。
さて、こちらは厚生労働省の資料で、学歴別の初任給の推移を見た表です。
これを見ると、赤枠で囲んだ大学院修士卒の平均からは、3~4万円ほど下回っています。
青枠の大卒と比較しても、1万円くらい負けてますね・・・。
仮にボーナスを4ヶ月とすると、年収にして約50~60万円ほど、院卒平均より低いことになります。
院卒なんだから大卒や高卒よりエライんだゾ!
だから給料あげろヨ!
と言いたいわけではありません。
ただ、修士課程を修了するためには、それなりのコストや時間が掛かっていること、
専門教育を受け、相対的に専門性の高い仕事をしている(はず)ということを考えると、
もう少し給与水準が高くてもいいのでは?と思うのが正直なところです。
他の領域(業種)の心理職と比べてどうなのか
できれば領域別に年収の比較をしたいところですが、
これは残念ながら、客観的かつ大規模なデータが存在しません。
(もしあったら教えてください。)
今後、公認心理師の実態調査で少し明らかになってくるかもしれません。
ただ、全体の平均については、臨床心理士会の調査で出されているので、そちらを見てみましょう。
少し古い2016年のデータですが、これが2021年初時点の最新版です。
これを見ると、年収のボリュームゾーンは、200万円以上500万円未満にあることが分かります。
ここだけで56%、つまり半数以上に達しますね。
ここからすると、370万円という年収は、まあ至って普通、というところでしょうか。
ただし、このグラフには、週数日勤務するだけの非常勤心理職も含まれているので、
フルタイムの心理士の年収がどのような分布になるのかは、これだけでははっきりしません。
(週3~4日の勤務しかしてないけど、割がいい仕事なのでそこそこの年収はもらえる、というケースもあります。SCを週2やっただけで300万超えますからね…)
精神科病院勤務の心理士の年収を時給換算するとどうなのか
別の切り口からの検討として、年収を時給換算してみます。
常勤職は時給で働いているわけではありませんが、一つの目安にはなるでしょう。
先ほど紹介した、新卒時の年収を、勤務時間で割ってみましょう。
このようになりました。
時給約2千円、日給にして1万5千円というところです。
ほかに退職金制度や、福利厚生なども(わずかに)ありますが、
その辺りは一律に数値化しにくいので、あくまでも年収ベースでの計算としておきます。
どうでしょう。
一般の派遣社員よりは、ちょっと高いかなという水準でしょうか。
まとめ
精神科病院勤務の臨床心理士・公認心理師の年収(初年度)について、
いくつかの観点から検討してきました。
まとめるとこんな感じですね。
いかがだったでしょうか?
もちろん、これが多いか少ないかは、単に数字上のことだけではありません。
業務内容や勤務環境によっても、仕事に見合うかどうかという評価は変わってきますよね。
今後、精神科病院の心理職の業務内容などについても、順次アップしていきますので、ご期待ください!
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