はじめに
あのときのLINE、既読になってるのに返事がない。 打ち合わせのとき、上司の表情が冷たかった気がする。 友人のSNSに、自分だけメンションされていなかった——。
はっきりと何かされたわけではないのに、心がざわつく。 「もしかして嫌われた?」「自分が何かしてしまった?」と、不安な気持ちが頭から離れなくなる。
そんな経験はありませんか?
今回は、こうした対人関係の”理由のない不安”と、 私たちの心の奥にある “愛着スタイル” の関係について、 やさしくひもといていきます。
なぜ、あんなに気になるのだろう?
相手に何かされたわけではなくても、心がざわつくとき、 そこには「自分の中の感受性」が関わっていることがあります。
たとえば、相手のちょっとした表情の変化、声のトーンの揺れ、 文面の言い回し……。
一つひとつは大したことのないように思えても、 そのすべてが「嫌われたかも」「距離を置かれてるかも」と、 自分をざわつかせる要素になってしまう。
それは、自分の中に「関係が壊れること」への強い恐れがあるからかもしれません。
愛着スタイルとは?
心理学では、人との距離の取り方や関係の築き方の”傾向”を 「愛着スタイル」と呼びます。
これは、生まれてからの育ちの中で 特に親や養育者との関係を通して形成される、 “人とのつながり方”の基盤のようなものです。
大きくは以下の4つのタイプに分けられると言われています:
- 安定型:他人を信頼でき、自分も大切にできる。
- 不安型:見捨てられる不安が強く、相手に過度に依存しやすい。
- 回避型:親密さを避け、距離を取りたがる傾向がある。
- 恐れ・回避型:親密さを求める気持ちと、傷つく不安が混在する。
「嫌われたかも」と思いやすいのは、どんなスタイル?
「嫌われたかもしれない」と不安になりやすい人は、 この中でも 不安型の愛着スタイル をもっている可能性があります。
このタイプの人は、
- 相手の態度が少し変わると「自分のせいかも」と思ってしまう
- すぐに仲直りできないと「見捨てられた」と感じてしまう
- 関係を維持するために、自分を抑えてしまう
といった傾向がみられます。
本人にとってはとても切実な悩みですが、 これらは「性格」ではなく、「こころのクセ」として理解することができます。
変えるのではなく、「気づく」ことが第一歩
愛着スタイルは、変えようと無理に努力するものではありません。 むしろ、「自分はこういう傾向があるのかもしれない」と気づくだけで、 不安との付き合い方はずいぶん変わっていきます。
たとえば、
- “嫌われたかも” と思ったときに「今、自分の中の不安型スイッチが入ったのかも」と意識する
- 相手の反応に振り回される前に、「本当にそう思われているのか?」と問い直してみる
- 自分の不安をノートに書いて、冷静に眺めてみる
こうした”気づきの習慣”は、徐々に心の反応をゆるやかにしてくれます。
おわりに
人間関係の中で不安になることを、 「自分が気にしすぎなんだ」と責める人は多いです。
でも、それは「気にしすぎ」ではなく、 「感受性が高い」「つながりを大切にしている」あなたらしさでもあるのです。
愛着スタイルは、変えようとしなくてもかまいません。 ただ、「あ、また不安になってるな」と気づけるだけで、 その不安に巻き込まれずにいられるようになります。
あなたの心が、少しずつでも安心できる関係に出会えるように。 そして、まずは「自分との関係」から、やさしく結び直していけますように。
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